離婚調停のオンライン化とは? メリットや注意点を弁護士が解説
- 離婚
- 離婚調停
- オンライン
令和7年3月1日から改正人事訴訟法・家事事件手続法が施行され、離婚調停のオンライン化がスタートしました。
従来は、裁判所に出頭しなければ離婚調停を成立させることができなかったものがウェブ会議を利用して離婚調停を成立させることが可能になり、当事者の負担が大幅に軽減されます。
ただし、離婚調停をオンラインで進める際にはいくつか注意すべきポイントがあります。今回は、令和7年3月1日からスタートした離婚調停のオンライン化のメリットや注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 四日市オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚調停のオンライン化とは? メリットは?
離婚調停のオンライン化とはどのような制度なのでしょうか。以下では、オンラインによる離婚調停の概要とメリットについて説明します。
-
(1)令和7年3月1日から離婚調停のオンライン化がスタート
離婚調停のオンライン化とは、離婚調停の当事者が裁判所に実際に出頭することなく、ウェブ会議を利用して、離婚調停を成立させることができる制度です。
離婚調停へのウェブ会議や電話会議システムを利用した参加は、これまでも認められていましたが、離婚調停を成立させる場面では直接対面で意思確認を行わなければならず、裁判所への出頭が必要でした。
しかし、離婚調停のオンライン化により、離婚調停を成立させる場面も含めてウェブ会議での参加が可能になりました。
離婚調停のオンライン化は、令和7年3月1日からスタートしましたので、今後利用が拡大していくと予想されます。 -
(2)離婚調停のオンライン化によるメリット
離婚調停のオンライン化には、以下のようなメリットがあります。
① 相手と直接顔を合わせる必要がないため心理的な負担が軽減される
離婚調停がオンライン化されたことで、最初から最後まで相手と直接顔を合わせることなく離婚調停を成立させることができます。これにより当事者の心理的な負担が軽減されるというメリットがあります。
特にDVやモラハラの被害者は、相手と対面するだけでも多大な精神的ストレスが生じ、場合によっては身の危険を感じることもありますので、それを防げるのは大きなメリットです。
② 遠方の当事者も離婚調停を利用しやすくなる
離婚調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で行うため、申立人が遠方に居住している場合、調停に参加するのは時間や費用の面で大きな負担となっていました。
しかし、すべての手続きをウェブ調停で完結できれば、そのような負担も最小限に抑えることができ、遠方の当事者も離婚調停を利用しやすくなります。
2、離婚調停をオンラインで進める際の注意点
離婚調停をオンライン会議で進める際には、以下の点に注意が必要です。
-
(1)自分の意思を正確に伝えるため、事前に書面を調停委員へ提出しておく
離婚調停にオンラインで参加する場合、ウェブ会議を利用することになりますが、ウェブ会議は、対面での参加に比べて調停委員の感情が読みにくい、意思疎通がしにくいなどのデメリットがあります。
そのため、自分の意思を正確に伝えるには、事前に自分の主張をまとめた書面を調停委員に提出しておくことが有効です。これによりウェブ会議のデメリットを補いつつ、離婚調停に参加することができます。 -
(2)最初は直接裁判所に出頭し、2回目以降はオンラインで行うなど柔軟に対応する
離婚調停のオンライン化により最初から最後までウェブ会議を利用して調停に参加し、離婚調停を成立させることができます。
しかし、ウェブ会議だけだと微妙なニュアンスが伝わりにくく、調停委員の人柄や性格などもわかりづらいため最初の1回は裁判所に出頭し、2回目以降からオンラインで参加するなど柔軟な対応を検討してみましょう。 -
(3)調停の録画や録音は禁止されている
離婚調停をウェブ会議により参加する場合、調停で話した内容を後で確認するために録画や録音をしようとする人もいます。
しかし、離婚調停の録画や録音は禁止されており、オンライン化によるウェブ会議であってもそれは変わりません。他方、メモを取ることは自由ですので、録画・録音ではなくメモで対応するようにしましょう。
お問い合わせください。
3、離婚する前に知っておくべきこと
少しでも有利な条件で離婚するためにも、以下のようなことを知っておくべきです。
-
(1)子どもがいる場合は養育費や親権を決めなければならない
夫婦に子どもがいる場合には、子どもの親権者を決めなければなりません。2026年4月に共同親権が導入される予定ですが、現行法では単独親権が前提ですので、父または母のどちらか一方を親権者に指定する必要があります。
また、親権を獲得した親が子どもと同居することになるため、非親権者(非監護親)に対して、養育費を請求することができます。
養育費の金額は、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にすれば、およその相場を把握できます。事前に、相場を把握してから話し合いをするようにしましょう。 -
(2)法的に有効な証拠収集が必要になる
配偶者がDV、モラハラ、不貞行為などをしていた場合、慰謝料請求が可能です。
もっとも、慰謝料を請求するにはDV、モラハラ、不貞行為があったことを証拠により立証しなければなりません。
法的に有効な証拠がなければ離婚や慰謝料請求が困難になりますので、事前にしっかりと証拠を集めるようにしましょう。
特に、別居後では証拠収集が困難になりますので、別居前から証拠収集を始めることが重要です。 -
(3)離婚後の住まいや収入源を確保する必要がある
離婚後は夫婦別々の生活になるため、離婚後に自分が暮らす住まいや生活費をどう確保するかが重要です。特に専業主婦の方は、収入源の確保に向けた準備も必要になります。
これらが整っていないと、離婚後の生活に不安が残り、離婚の話し合いもうまく進みにくくなるため、早めの対応をおすすめします。
4、離婚時のトラブルは弁護士に相談を
離婚時のトラブルでお困りの方は弁護士に相談することをおすすめします。
-
(1)離婚調停で必要な書類や証拠収集のサポートを期待できる
離婚調停は、基本的には話し合いの手続きになりますが、有利に進めるには主張書面や証拠の提出も有効な手段となります。
弁護士は、依頼者にとって有利な条件で離婚するために必要な証拠収集のサポートを行います。また、裁判所に提出する書面についても法的観点からわかりやすく作成できるので、調停委員や裁判官にこちら側の主張をよく理解してもらえるはずです。 -
(2)財産分与などの法的な手続きを任せられる
夫婦の共有財産は、基本的には2分の1ずつ分けることが可能です。しかし、相手が任意に財産の開示をしない場合には、適正な条件で財産分与をすることができません。
また弁護士が、離婚調停において「調査嘱託」や「弁護士照会」などの法的手続きを用いることで、相手の隠している財産を明らかにできる可能性が高まります。 -
(3)離婚調停のウェブ会議に同席してもらうことできる
弁護士に依頼すれば離婚調停のウェブ会議に同席することが可能です。
初めての離婚調停ではどのように対応すればよいかわからないことも多いですが、隣に弁護士がいれば安心して調停に参加することができるでしょう。
相手から提案された条件が自分にとって有利な条件か不利な条件かも弁護士であればすぐに判断することができますので、不利な条件を押し付けられるリスクも回避可能です。
お問い合わせください。
5、まとめ
離婚調停は、対面での意思確認が必ず必要だったこれまでの制度から、完全にオンラインで完結できるようになり、令和7年3月1日から施行されています。
DV被害者などが相手と直接会わずに済むなどのメリットが期待できますが、意思確認については注意する必要があるため、事前に書面を調停委員に提出するなどの対応が必要です。
離婚調停を有利に進めるためには専門家である弁護士のサポートが重要です。まずはベリーベスト法律事務所 四日市オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
