旦那が隠れて借金していたら離婚できる? 離婚後の返済や進め方を解説
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四日市市の公表している「四日市市統計書」によると、令和4年に四日市市では669件の離婚が成立しました。
離婚原因には不貞行為やDV、性格の不一致などさまざまな理由がありますが、「旦那が隠れて借金をしていた」ということを理由に離婚を検討している方もいるでしょう。一方、借金を理由にそもそも離婚はできるのか、気になる方もいるかもしれません。
本コラムでは、配偶者の借金を理由に離婚はできるのかどうか、離婚後の借金の取り扱いや離婚方法について、ベリーベスト法律事務所 四日市オフィスの弁護士が詳しく解説します。


1、旦那が隠れて借金していたことを理由に離婚できる?
借金は、離婚できる理由(法定離婚事由)に該当する可能性があります。しかし、金額や理由によっては、離婚できない可能性もあります。詳しくみていきましょう。
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(1)借金は離婚できる理由に該当する可能性がある
借金を理由に離婚する方法は協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つです。
協議離婚と調停離婚は、夫婦が合意すれば離婚が成立することから、相手が離婚に納得してくれれば、どのような理由でも離婚できます。しかし、裁判離婚の場合は、「法定離婚事由」という、法律で定められた離婚理由がなければ離婚が認められません。
民法770条1項には、以下の5つの事由が法定離婚事由として挙げられています。- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
この規定からわかるように、裁判で離婚が認められる離婚原因として「借金」については明記されていません。
しかし、借金の程度や理由によっては、法定離婚事由の「配偶者から悪意で遺棄されたとき(悪意の遺棄)」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。 -
(2)借金が法定離婚事由に該当するケース
以下のケースでは、法定離婚事由のうち「悪意の遺棄」あるいは「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして、裁判で離婚が認められる可能性があるでしょう。
① 配偶者がギャンブルやブランド品などの購入による浪費で借金を繰り返し、生活費に支障が出ている
② 配偶者が不倫相手に貢ぐために借金をした
③ 配偶者が高額な借金をしている
など
ただし、ケース・バイ・ケースであるため、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。
2、離婚後、旦那の借金の肩代わりは必要?
借金を理由に離婚をしたら、あとから配偶者の借金を肩代わりする必要があるのかどうか、心配な方もいるでしょう。
借金を肩代わりする必要があるかどうかは、借金の用途によって異なります。詳しくみていきましょう。
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(1)離婚後に旦那の借金を肩代わりする必要がない場合
配偶者の連帯保証人になっておらず、借金の用途がギャンブルや趣味など相手の個人的なものである場合は、債務者(返済義務を負う者)は借金をした配偶者のみです。
したがって、離婚後に借金を肩代わりする必要はありません。
ただし、離婚後にトラブルにならないよう、「夫の借金はすべて夫自身が返済する」といった内容を公正証書や離婚協議書に記載して残しておくことをおすすめします。公正証書や離婚協議書については、3章で詳しく紹介します。 -
(2)離婚後に旦那の借金を支払わなければならない場合
以下の場合は、配偶者とともに借金を返済する義務があります。
① 連帯保証人になっている
住宅ローンを組むときなど、妻が夫の連帯保証人になるケースもあるでしょう。
連帯保証人は、主債務者と同様の責任を負っており、離婚をしても返済義務がなくなるわけではありません。そのため、主債務者である夫が借金を返済できない場合は、離婚後であっても連帯保証人である妻が借金を支払う義務を負うのです。
② 結婚生活のための借金だった
自動車ローンなど、結婚生活に必要な借金だった場合、原則として借金も財産分与の対象となります。「財産分与」は、夫婦で協力して築いた財産を離婚時に分けることです。夫婦の貯金や、結婚後に購入した家具家電、不動産などの財産と同様、借金も分けなければなりません。
借金がある場合の財産分与は、預貯金や価値のある動産などのプラスの財産から借金の金額を引き、残った財産を夫婦で1/2ずつ分けることになります。
プラスの財産で借金を返済しきれない場合は、離婚後も支払う必要があるでしょう。
お問い合わせください。
3、旦那が隠れて借金していた場合の離婚の進め方
配偶者の借金を理由に離婚する場合の手順について詳しく解説していきます。
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(1)借金の内容や金額に関する情報を整理する
配偶者に離婚を切り出す前に、まずは借金の内容や金額についての情報を整理しておきましょう。
借金の理由が夫の個人的なものなのか、夫婦のためのものなのか、金額、借入日・返済日などの情報をまとめておきます。
借金の理由や金額次第では、借金を妻も支払わなければならないかもしれません。また、離婚裁判になった場合には、借金理由や金額で離婚できるかどうか判断されます。このように、今後の生活にも影響があるため、借金の情報を正確に把握しておくべきです。 -
(2)話し合いによる協議離婚を進める
借金に関する情報が整理できたら、夫婦で話し合い協議離婚を進めていきましょう。
協議離婚では、夫婦で離婚条件について話し合いを行います。合意をしたら、2章で解説したように、「旦那の借金はすべて旦那自身が返済する」といった内容を、合意した離婚条件と共に公正証書や離婚協議書に記載して残しておきましょう。
離婚協議書は、夫婦双方が署名捺印をしていれば、手書きでも作成できます。
一方、公正証書であれば、公文書であるため信用性が高く、また金銭の支払いについては執行力(強制執行手続きができること)を持つため、離婚後のトラブルをより回避しやすくなるでしょう。
たとえば、養育費の取り決めとして、公正証書に「支払いが滞れば強制執行を受けることに合意している」といった強制執行認諾文言を入れておけば、相手の支払いが滞った場合に、裁判を経ず相手の財産を差し押さえる強制執行手続きが行えます。
借金を理由に離婚する場合、離婚後に相手が養育費や慰謝料などの金銭債務を無視しないか不安に思われるかもしれません。そのようなときは、公正証書の作成を検討してみてください。 -
(3)相手が同意しない場合は調停離婚に進む
相手が離婚に同意しない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停離婚の成立を目指しましょう。調停では、調停委員を仲介役に話し合いを進めていきます。調停委員は、アドバイスや和解案を提示してくれる可能性もありますが、必ずしもそれに従う必要はありません。
夫婦双方が合意すると、裁判所が調停調書を作成します。 -
(4)調停離婚でもまとまらない場合は離婚訴訟を検討する
夫婦で合意がなされず、離婚調停が不成立となったら、離婚訴訟(離婚裁判)を提起して裁判離婚の成立を目指しましょう。1章で解説したとおり、裁判では法定離婚事由に該当する事実がないと離婚は認められません。したがって、裁判官に対し、借金が法定離婚事由に該当すると認めてもらえるような証拠を用意しておきましょう。
有効な証拠としては、以下のものが挙げられます。- 給与明細書
- クレジットカードの利用明細
- 領収書
- 督促状
- 家計簿
4、旦那が隠れて借金をしていたら弁護士に相談を
夫が隠れて借金をしていたことが発覚した場合は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、配偶者との交渉や、公正証書・離婚協議書の作成をサポート可能です。
また、状況によっては、配偶者に慰謝料請求を検討できるケースもあるでしょう。弁護士に依頼をすることで、慰謝料請求ができるか、適切な請求金額はいくらかなどの判断を受けることができます。
借金の問題のほか、養育費の請求方法や適切な財産分与の対応についてなど、離婚に関わるさまざまなお悩みを解決できる可能性があります。まずは弁護士への相談をご検討ください。
5、まとめ
旦那が隠れて借金をしていたことを理由に離婚できるかどうかは、ケース・バイ・ケースです。法定離婚事由として借金については明記されていませんが、内容や金額によっては、相手が離婚を拒否していても、離婚裁判で離婚できる可能性があるでしょう。
また、配偶者の借金を肩代わりする義務があるかどうかは、借金の内容によります。連帯保証人となっていたり、配偶者の借金が婚姻生活のためのものであったりした場合は、借金の肩代わりが必要です。お困りの際は、弁護士に相談しましょう。
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