看護師が免許取消しになる「罰金以上の刑」とは? 前科を回避する方法
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看護師が罰金以上の刑に処せられてしまうと戒告・業務停止・免許取消しといった行政処分を受けてしまう可能性があります。
ただし、罪を犯せば必ず行政処分の対象になるわけではなく、適切な対応をすることで失職や免許停止を回避することが可能です。
今回は、看護師免許の欠格事由である罰金以上の刑とは何か、罰金以上の刑に処せられたときの日常生活への影響などについて、ベリーベスト法律事務所 四日市オフィスの弁護士が解説します。
1、看護師が逮捕されたらどうなる?
看護師が何らかの罪を犯して逮捕されてしまったらどうなるのでしょうか。
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(1)罰金以上の刑に処せられると法律上の欠格事由に該当する
看護師が何らかの罪を犯して、起訴され罰金以上の刑に処せられてしまうと、看護師免許が取り消されてしまう可能性があります。
保健師助産師看護師法9条、14条では、看護師が罰金以上の刑に処せられた場合、または看護師の業務に関し犯罪・不正があった場合に厚生労働大臣が以下の処分をできると定められています。- 戒告
- 3年以内の業務の停止
- 免許の取消し
つまり、罰金以上の刑に処せられてしまうと看護師免許が取り消されてしまい、看護師としての仕事ができなくなる可能性があるということです。
なお、戒告、業務の停止、免許の取消しのうちどの処分が下されるかは、具体的な事案によって異なりますが、令和6年11月7日に行われた「保健師助産師看護師行政処分等関係審議」の記録によると看護師および保健師に対する行政処分の内訳は、以下のようになっています。- 免許の取消し:4件
- 業務の停止:17件
- 戒告:3件
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(2)逮捕だけでは看護師に対する行政処分の対象にはならない
看護師に対する行政処分の対象になるのは、以下のいずれかに該当する事情がある場合です。
- 看護師が罰金以上の刑に処せられた場合
- 看護師の業務に関し犯罪または不正があった場合
このうち「罰金以上の刑に処せられた」とは、刑事裁判で罰金以上の刑を言い渡す判決が確定した場合をいいます。
何らかの罪を犯したとしても逮捕されただけであれば、有罪判決は確定していませんので、業務停止や免許取消しなどの行政処分を受ける心配はありません。
2、看護師の欠格事由である「罰金以上の刑」とは?
看護師の欠格事由である「罰金以上の刑」とは、どのような刑罰を指すのでしょうか。
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(1)過去に拘禁刑(懲役・禁錮)、罰金の刑を受けた者であること
看護師の欠格事由である「罰金以上の刑」とは、過去に死刑、拘禁刑(懲役・禁錮)、罰金の刑を受けた経歴があることをいいます。
刑罰の種類には、重い方から死刑、拘禁刑(懲役・禁錮)、罰金、拘留、科料の5種類がありますが、看護師の欠格事由は罰金以上と定められていますので、拘留と科料を除く刑罰が対象になります。 -
(2)死刑・拘禁刑(懲役・禁錮)、罰金となる罪の具体例
看護師の欠格事由である罰金以上の刑の対象となる犯罪にはさまざまなものがあります。非常に多くの犯罪が法定刑に罰金刑を含んでいますので、何らかの罪を犯すと罰金以上の刑に処せられる可能性があるといえるでしょう。
実際に令和6年に看護師が行政処分を受けた犯罪としては、以下のようなものが挙げられます。- 非現住建造物等放火罪
- 建造物等以外放火罪
- 不同意わいせつ罪
- 性的姿態等撮影罪(盗撮)
- 詐欺罪
- 傷害罪
- 窃盗罪
- 住居侵入罪
- 道路交通法違反
- 過失運転致死傷罪
- 迷惑防止条例違反
故意に罪を犯した場合だけではなく、交通事故のように過失で人を死傷させたような場合も行政処分の対象になるため、通勤などで自動車を運転される方は、事故を起こさないように注意して生活しなければなりません。
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(3)執行猶予や略式裁判でも対象となる
執行猶予付き判決や略式裁判による罰金も看護師の行政処分の対象になる点に注意が必要です。
執行猶予付き判決は、一定期間刑の執行が猶予されているだけであり、有罪判決であるということには変わりありません。たとえば、「懲役1年、執行猶予3年」という判決であれば、懲役刑の有罪判決ですので罰金以上の刑にあたります。
また、略式裁判は、公判手続きを行わずに書面審理のみで罰金または科料を言い渡す手続きであり、通常の刑事裁判とは手続きの形式が異なるものの罰金刑であることには変わりありません。
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3、前科が付いた看護師の復職は無理? 日常生活への影響
何らかの罪を犯して前科が付いてしまうと看護師としての仕事に復職するのは難しいのでしょうか。
以下では、看護師が罰金以上の刑に処せられたときの日常生活への影響について説明します。
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(1)業務停止になったらもう看護師に戻れない?
罰金以上の刑に処せられ業務停止処分を受けた場合、3年以内の期間が定められて看護師としての業務が禁止されます。
業務停止期間中は、看護師の仕事に戻ることはできませんが、業務停止期間が経過すれば、復職が可能となります。
他方、免許取消し処分になると看護師免許が失われてしまいますので、看護師としての仕事に戻ることはできません。
再度、看護師国家試験を受験することは可能ですが、罰金以上の刑に処せられたことは看護師免許の欠格事由とされていますので、試験に合格しても免許の取得は難しいでしょう。 -
(2)再就職・転職する際にバレる?
病院が就職希望者の前科照会を行うことはできませんので、必ず前科がバレるというわけではありません。
しかし、賞罰欄のある履歴書を使う場合は、前科について記載する必要がありますので、書類選考で前科の有無がバレてしまう可能性があります。
賞罰欄のない履歴書を使えば、履歴書からは前科の有無はわかりませんが、面接で前職を辞めた理由や経緯などを聞かれたときに前科がバレてしまう可能性があります。
虚偽の記載や説明をすると採用後にトラブルになる可能性もあるため、前科については正直に話した方がよいでしょう。 -
(3)前科があると取れない資格は他にある?
前科があると一部の国家資格の取得や特定の資格を持つ職種への就業が制限されることがあります。看護師と同様に前科が欠格事由として定められている資格としては、以下のようなものが挙げられます。
- 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士などの士業
- 医師、薬剤師、助産師、保健師などの医療系の資格
- 国家公務員や地方公務員
- 保険募集人
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(4)海外旅行ができない、ローンが組めないって本当?
前科があったとしても「海外旅行に行けない」「ローンが組めない」ということはありません。
前科が及ぼす日常生活への影響に関しては、インターネット上で誤った情報が掲載されていることもあるため注意が必要です。
4、看護師が失職や免許取消しを回避するためには?
何らかの罪を犯してしまった看護師が失職や免許取消しを回避するにはどうしたらよいのでしょうか。
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(1)できるだけ早く弁護士に相談する
看護師が何らかの罪を犯したとしても、裁判で罰金以上の刑が確定しない限り、直ちに失職または免許取消しとなることはありません。
すべての犯罪が起訴に至るわけではなく、不起訴処分を獲得することができれば失職や免許取消しを回避できる可能性があります。
そのためには、刑事事件の実績が豊富な弁護士のサポートが重要となります。何らかの罪を犯してしまったときは、できるだけ早く弁護士に相談することが望ましいでしょう。 -
(2)被害者との示談を成立させる
被害者がいる犯罪に関しては、被害者との示談を成立させることで不起訴処分を獲得し、罰金以上の刑を回避できる可能性があります。そのため、罪を犯したときはすぐに被害者との示談交渉を行うことが重要です。
ただし、当事者同士だと示談交渉が難航するケースも少なくないため、被害者との示談交渉は弁護士に任せることをおすすめします。弁護士が窓口になることで、被害者としても安心して対応でき、交渉が円滑に進む可能性が高まります。 -
(3)勤務先による不当解雇を争う
何らかの罪を犯したことで勤務先の病院を解雇されてしまったとしても、解雇の有効性に疑義があるときは、不当解雇として争うことが可能です。
解雇には厳しい要件が設けられているため、犯罪の種類や性質、刑事処分の内容によっては解雇が無効になる可能性も十分にあります。
不当解雇の主張には、労働法に関する専門的知識や実務経験が必要となるため、会社との交渉や労働審判、訴訟対応を適切に進めるためにも、早期に弁護士へ相談し、対応を検討することが望ましいでしょう。
5、まとめ
看護師が何らかの罪を犯し、刑事裁判により罰金以上の刑が確定すると、戒告・業務停止・免許取消しという行政処分の対象になります。犯罪の種類や性質によっては、免許取消しとなり看護師としての資格を失ってしまう可能性もあります。
こうした不利益を回避するには、早期に弁護士に相談し、刑事弁護の方針を立てることが重要です。
不起訴処分を獲得できれば前科が付かず、看護師としての資格や職務への影響も最小限に抑えられる可能性があります。まずはベリーベスト法律事務所 四日市オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
