大声でクレームを入れたら逮捕される? クレームが犯罪になるケースとは

2024年06月27日
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大声でクレームを入れたら逮捕される? クレームが犯罪になるケースとは

企業や店舗に対する理不尽なクレーム、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題になっています。カスハラはさまざま業界で発生しており、防犯カメラなどの映像がネットで公開されて注目される事例も発生しております。交通・運輸業界では46.6%、自治体で46%、国家公務員では60.3%の職員がカスハラを経験したという統計もあり、各業界が対策を強化しているところです。

過去には、衣料品店で店員に土下座を強要したという容疑や、通信会社のフリーダイヤルに対して短期間で数百回のクレーム電話をかけたなどの容疑で逮捕された事例もあります。自分では「当然のクレームだ」と思っていても、店員や企業・店舗側の考え方次第では刑事事件に発展してしまう可能性もあるため、クレームを行う際にはハラスメントにならないように注意しましょう。

本コラムでは、企業や店舗に対するクレームで問われる罪や逮捕の危険性、犯罪の容疑をかけられてしまった場合の対策について、ベリーベスト法律事務所 四日市オフィスの弁護士が解説します。


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1、理不尽・過度なクレームは犯罪になる?

企業や店舗に何らかの落ち度があった場合、顧客としてはミスを指摘して謝罪を求めたり、返金や代替えを求めたりする場合があるでしょう。
しかし、過度なクレームは犯罪になってしまうおそれがあります。

  1. (1)危害を告げれば脅迫罪

    店舗の責任者や従業員などに対して「痛い目に遭わせるぞ」「店に火をつけるぞ」などと脅した場合は、刑法第222条1項の「脅迫罪」が成立します。
    脅迫罪は、生命・身体・自由・名誉・財産に対して危害を加える内容を告げた場合に成立する犯罪であり、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科せられます。

  2. (2)義務のないことをさせれば強要罪

    暴行・脅迫を用いたうえで人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりといった行為があると、刑法第223条1項の「強要罪」が成立します。
    たとえば、「土下座の強要」は強要罪にあたります。
    法定刑は3年以下の拘禁刑です。

  3. (3)金品を脅し取れば恐喝罪

    責任者や従業員を脅して金品を脅し取ると、刑法第249条1項の「恐喝罪」に問われます。
    たとえば、実際に生じた損害の程度を越えて迷惑料や慰謝料といった金銭の支払いを求めると、恐喝罪が成立する可能性があります。

    また、同条2項には「財産上不法の利益を得たり、他人に得させたりした者」についても恐喝罪が成立する旨が定められています。
    具体的には、クレームに乗じて「代金を無料にしろ」などと求める行為も、恐喝罪にあたる可能性があります。
    法定刑は10年以下の懲役です。

  4. (4)営業活動を妨害すると威力業務妨害罪

    威力を用いて人の業務を妨害する行為は、刑法第234条の「威力業務妨害罪」にあたります

    ここでいう「威力」とは、相手の自由意思を制圧するような行為を指し、暴力的な行為だけでなく訪問によるしつこいクレーム、電話、メールなどによるものも含みます。
    また、実際に業務が妨げられた結果は必要なく、業務を妨げる危険がある行為をした時点で、威力業務妨害罪が成立します。
    威力業務妨害罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

  5. (5)デマを拡散すると信用毀損(きそん)罪

    クレームに乗じた嫌がらせとしてSNSや掲示板サイトなどでデマを拡散させることで、企業や店舗の経済的な信用を傷つけると、刑法第233条の「信用毀損罪」に問われます

    ここでいう「経済的な信用」とは、本来は支払い能力などを指すものですが、商品やサービスの品質なども含まれると解釈されます。
    そのため、たとえば「あの店の料理に虫が入っていた」などのデマを流したら、信用毀損罪が成立する可能性があるのです。
    また、実際に経済的な信用が傷ついたという結果が生じなくても、経済的な信用を傷つけるおそれのある行為をした時点で、信用毀損罪が成立します。

    信用毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

2、公務員へのクレームでも犯罪になる

冒頭でも触れたとおり、カスハラ行為は「公務員」に向けられる場合もあります。
店舗の店員に対する場合と同様に、公務員に対する理不尽なクレームも犯罪になる可能性があるため、注意しましょう。

  1. (1)基本的には店員の場合と同じ

    クレームが犯罪となるかどうかについては、役所などの公務員が相手になったときでも、基本的には店員の場合と同じ基準が採用されます。
    つまり、クレーム行為の内容によっては、脅迫罪・強要罪・威力業務妨害罪などが成立するおそれがあるのです。

    もちろん、公務員が相手だとクレームをつけてはいけないといった決まりは存在しません。
    正当な理由があって苦情を入れることや、公務員のミスや不作為について謝罪や賠償を求める行為が制限されるわけではないので、適切な方法で申し入れを行うようにしましょう。

  2. (2)公務の円滑な遂行を妨害すると公務執行妨害罪

    公務員に対するクレームは、刑法第95条1項の「公務執行妨害罪」にあたる可能性があります。

    公務執行妨害罪とは、公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行または脅迫を加えたときに成立する犯罪です。
    ニュースなどの報道に目を向けると、警察官に対して暴行をはたらいたときに適用されるケースが目立ちますが、本罪でいう「公務員」は警察官に限定されません。
    役所の職員、消防官、自衛官などのほか、法令によって公務に従事する駐車監視員なども公務員に含まれます。

    ただし、公務執行妨害罪が保護するのは、公務員そのものではなくあくまでも「公務員の職務執行」です。
    つまり、公務に従事していない状況であれば、相手の立場が公務員であっても本罪には問われません。
    一方で、役所の窓口に居座って長時間クレームをつけたうえで、職員につかみかかったり、机や椅子を蹴ったりするなどの暴力的な行為をはたらいた場合には、公務執行妨害罪が成立する危険が高くなります。
    法定刑は3年以下の懲役もしくは拘禁刑、または50万円以下の罰金です。

3、クレームが刑事事件に発展したら弁護士に相談を

自分では正当なクレームだと思っていても、相手方が警察に相談することで、刑事事件へと発展してしまうことがあります。
もし犯罪の容疑をかけられてしまったら、ただちに弁護士に相談して、サポートを受けてください。

  1. (1)被害者との示談交渉を代行できる

    刑事事件をもっとも穏便に解決できる手段は、被害者との話し合いによって和解する「示談交渉」です

    示談交渉を行う際には、クレームに乗じて乱暴な行為や脅しをかけたことを真摯(しんし)に謝罪してください。
    また、実害が生じていれば、慰謝料などを含めた損害賠償金(示談金)を支払うことも必要になります。

    被害者が謝罪を受け入れて被害届の取り下げや刑事告訴の取り消しに応じれば、捜査はその時点で終了し、不問となる可能性が高まります。
    ただし、相手が過度なクレームや乱暴な言動に対して強い怒りを感じているために、示談交渉を受け入れてもらえない、という場合もあります。
    したがって、示談交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。
    加害者本人からの交渉を聞き入れない相手でも、弁護士を介せば交渉が開始できる可能性が高くなります。
    また、法律の専門知識を持ち交渉のプロでもある弁護士に交渉を依頼することで、適切な損害賠償金額を算出することができ、トラブルなく示談交渉を成立しやすくなります

    なお、民間の企業・店舗が相手の場合は示談交渉による解決が期待できますが、公務員には犯罪を知ったときの告発義務があるため、示談交渉では解決できません。

  2. (2)逮捕の回避や早期釈放が期待できる

    警察が捜査を進める過程で、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあると判断されると、逮捕状を請求されて逮捕されてしまうことがあります。
    逮捕状にもとづく逮捕は、通常逮捕といいます。
    また、何度も事務所や店舗に訪れて乱暴な行為をはたらいている場合には、現場に潜入した捜査員によって現行犯逮捕をされてしまうおそれもあります。

    警察に逮捕されると、刑事裁判の要否が判断されるまでに最長で23日間の身柄拘束を受けます。
    また、刑事裁判にまで発展すると、保釈が認められない限り刑事裁判が終わるまで釈放されません。
    身柄拘束が長引けば、会社からの解雇など不利益な処分を受ける危険も高まるので、逮捕の回避や早期釈放に向けた対応が大切です。

    弁護士に依頼すれば、迅速な示談交渉や捜査機関へのはたらきかけにより、逮捕が回避できる可能性があります
    また、逮捕されてしまった場合でも、身柄拘束の必要性がないことを主張する、勾留決定に対して準抗告による不服申立てを行うなど、早期釈放を目指すことができます。

  3. (3)処分の軽減が期待できる

    刑事事件が進展すると、刑事裁判が開かれて有罪または無罪が言い渡されます。
    有罪になれば法律が定める範囲内で刑罰が言い渡され、場合によって拘禁刑となり刑務所に収監されてしまうおそれもあるのです。

    処分の軽減を図るためには、不起訴となって刑事裁判が開かれないようにすることが最善です。
    弁護士に依頼すれば、捜査の段階で被害者との示談を成立させる、犯罪が成立しないことを立証して検察官にはたらきかけるなど、不起訴を目指すための対応を行うことができます
    刑事裁判を回避できない場合にも、裁判官に対して犯罪の不成立を主張したり、刑が減軽されるべき理由を客観的に証明したりといった弁護活動を依頼することができます。
    ご自身やご家族が逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く、信頼できる弁護士に依頼しましょう。

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4、まとめ

自分では正当なクレームだと思っていても、クレームの方法や頻度によっては、相手からは脅しや嫌がらせだとみなされてしまうことがあります。
また、クレームへの対応に時間や人員を割くことで相手の業務が妨害される場合もあります。
相手に通報されたら逮捕されて罪に問われる可能性もあるため、クレームを行う際にも、怒りの感情に流されず冷静になることが大切です。

弁護士は、早期釈放や処分の軽減を目指して、示談交渉や弁護活動を行うことができます。
もし、クレームが原因でご自身やご家族が逮捕された場合には、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 四日市オフィスにご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています